新世紀エヴァンゲリオン 第拾参話「使徒、侵入」 【解説】

第拾参話「使徒、侵入」

第11使徒イロウル戦。ネルフ本部に侵入した第11使徒イロウルによってマギが乗っ取られ、自爆寸前に追い込まれます。

マギ : 第127次定期健診

ネルフではマギの第127次定期健診が行われ、終了。異常はありませんでした。

赤木リツコ :「異常なしか。母さんは今日も元気なのに、あたしはただ歳を取るだけなのかしらね」

この段階では赤木リツコの言葉の意味を理解する事は難しいのですが、ここでの「母さん」は「マギ」の事を指しているものと思われます。(以降の場面でマギが人格移植OSであり、そのマギの人格部に赤木リツコの母親である赤木ナオコ(第拾参話「使徒、侵入」では未だ名前は不明)の人格が使われている事が語られます。)

オートパイロット実験

マギの定期健診後、オートパイロットの実験が行われていました。前回の第拾弐話「奇跡の価値は」の予告にもあったようにシミュレーションプラグの実験のようです。

実験の趣旨はプラグスーツの補助無しに直接肉体からハーモニクスを行う事であり、パイロットである碇シンジ、惣流・アスカ・ラングレー、綾波レイの3人は身体の洗浄を何度も受けた後、裸でエントリープラグ(シュミレーションプラグ)に入っていました。

シミュレーションプラグを模擬体へと挿入し、テストが開始されます。テストは約3時間で終了の予定であり、データ収集は順調に行われていました。

オートパイロット実験中の赤木リツコと葛城ミサトの会話からするとマギの基礎理論と本体を作ったのは赤木リツコの母親、赤木ナオコであり、赤木リツコはシステムアップしただけのようでした。

第87タンパク壁

発令所ではシグマユニットD-17第87タンパク壁に変質を確認します。タンパク壁にはシミのようなものが見られました。しかし、無菌室の劣化は良くある事らしく、この時は、気泡が混ざった事によるもの、ずさんな工事によるものだとしていました。

その後、シグマユニットAフロアに汚染警報が発令。第87タンパク壁が劣化、発熱。更にシグマユニットD-18第6パイプ(超純水管)にも異常が発生。タンパク壁の侵食が爆発的なスピードで増幅して行っていました。

オートパイロット実験 : 中止

侵食の影響によってオートパイロットの実験は中止になっていました。

第6パイプの緊急閉鎖を行いますが、侵食は壁伝いに進行。侵食が向かう先には模擬体の置かれているプリブノウボックスがありました。

プリブノウボックスでは3機のポリソームを出し、侵食の侵入と同時に出力最大でレーザーを発射しよう待ち構えますが、その中で綾波レイの悲鳴が響き、綾波レイの乗る模擬体が勝手に動き出していました。侵食が模擬体の下垂システムへと入り込んだようです。碇シンジ、惣流・アスカ・ラングレー、綾波レイの乗るプラグは赤木リツコの指示で緊急射出されていました。

模擬体に発生した侵食とプリブノウボックスの壁に侵入して来た侵食をポリソームがレーザーで攻撃しますが、侵食部分にはATフィールドが発生していました。分析パターンは青。使徒でした。

使徒、侵入

その後も、侵食を続ける使徒、第11使徒イロウル(現時点では名前は不明)の拡大は続き、この事態に碇ゲンドウはセントラルドグマの物理閉鎖、汚染されたシグマユニットからの隔離を指示します。第11使徒イロウルに侵食を受けているプリブノウボックスは破棄され、総員退避となっていました。

ネルフ本部施設内では緊急事態の警報が出ていましたが、この警報は碇ゲンドウの支持によって止められていました。そして、日本政府と委員会(人類補完委員会の事だと思われます)には誤報、探知機のミスと伝えるように指示していました。

汚染区域は更に下降、プリブノウボックスからシグマユニット全域へと広がっていました。

冬月コウゾウ :「場所が不味いぞ」

碇ゲンドウ :「あぁ、アダムに近過ぎる」

ここでは碇ゲンドウと冬月コウゾウがアダムの事を気にしていますが、アダムがどこでどのような状態にあるのかはこの時点では不明です。

碇ゲンドウ :「汚染はシグマユニットまでで抑えろ。ジオフロントは犠牲にしても構わん」

何としても(ジオフロントを犠牲にしてでも)セントラルドグマへの使徒の侵入は防がなければならないようです。先ほどのアダムを気にしている会話と合わせて考えるとセントラルドグマにアダムがいると言う推測も成り立ちます。(アダム(と偽っているリリス)がいるのは実際にはセントラルドグマの最深部、ターミナルドグマになりますが。)

3体のエヴァンゲリオンの射出

3体のエヴァンゲリオンは碇ゲンドウの命令によってパイロットがいないまま地上へと射出されていました。エヴァンゲリオンが汚染されないようにするためです。

3体のエヴァンゲリオンの射出に際し、碇ゲンドウはエヴァンゲリオン初号機を最優先する事を伝えていました。そして、そのために他の2機は破棄しても構わないとまで言っていました。これまではエヴァンゲリオン初号機を優先するような場面は見られず、エヴァンゲリオン初号機と他のエヴァンゲリオンとの扱いに違いが現れたのはこの場面が初めてです。

加持リョウジはセントラルドグマでお仕事(スパイ)中でしたが、使徒襲来により引き上げていました。

シグマユニット以下のセントラルドグマの完全閉鎖が完了。閉鎖を完了したセントラルドグマを除く部分は侵入物に占拠されていました。

オゾンの注入

爆発的な増殖を見せる第11使徒イロウルでしたが、その増殖の勢いは超純水と重水との境目では鈍くなっているようであり、見ると無菌状態維持のためにオゾンを噴出している箇所は汚染されていないようでした。

この事から第11使徒イロウルは酸素に弱いと推測し、直ぐにオゾンを注入。この推測は当たり、オゾンを注入して行くと汚染されていた箇所は回復し、正常に戻って行っていました。

しかし、暫くすると第11使徒イロウルは再び増殖を始め、汚染域は拡大。オゾンは効果が無くなり、逆に第11使徒イロウルはオゾンを吸って増殖しているようでした。オゾンが第11使徒イロウルの増殖を助けていると分かるとオゾンの注入は停止されていました。

赤木リツコ :「凄い。進化しているんだわ」

最初は有効だったオゾンが途中から効か無くなり、逆に増殖を助けるものとなってしまったのは第11使徒イロウルが進化したためのようでした。進化する事によって毒を無効化し、更には自らが増殖するための栄養にしてしまったようです。

マギへのハッキング

発令所ではサブコンピューターへのハッキングを確認します。侵入者は不明でしたが、逆探に成功。それは施設内B棟地下のプリブロウボックスからであり...侵入者は第11使徒イロウルでした。

プリブロウボックス内の汚染された模擬体を映像で見ると、表面には変化する光学模様が見えました。光っているところは電子回路のように見え、それはコンピューターそのものと言えるようでした。これも進化によるもののようです。

発令上では第11使徒イロウルによるハッキングを阻止しようと作業が続けられていましたが、対抗手段はどれも効果が無く、阻止出来ずにいました。

青葉シゲル :「このコードは...やばい、マギに侵入するつもりです」

第11使徒イロウルはパスワードを探って保安部のメインバンクに侵入し、更に、メインパスを探っていました。マギに侵入するつもりでいるようです。

マギへの侵入を防ぐために碇ゲンドウの指示によってI/Oシステムの切断作業が行われます。しかし、I/Oシステムの切断は受け付けられず...第11使徒イロウルによるメルキオールへの接触、侵入を許していました。侵入されたメルキオールは短時間で第11使徒イロウルによって乗っ取られていました。

第11使徒イロウルよって乗っ取られたメルキオールは自律自爆を提訴します。しかし、これはバルタザールとカスパーの反対によってによって否決されていました。しかし、この否決を受け、メルキオールは直ぐにバルタザールのハッキングを開始。このままではバルタザールが乗っ取られるのも時間の問題のようでした。

バルタザールへのハッキングが進む中、赤木リツコはロジックモード変更を指示します。赤木リツコの指示に従いシンクロコードを15秒単位に変更するとバルタザールへのハッキングの進行は遅くなっていました。バルタザールの乗っ取りは防げないものの、それまでには2時間は掛かるようであり、時間稼ぎにはなるようでした。

作戦会議

第11使徒イロウルはマイクロマシーン、細菌サイズの使徒のようであり、その個体が集まって群れを作り、この短時間で知能回路の形成に至るまで爆発的な進化を遂げたとの事でした。

常に自分自身を変化させ、いかなる状況にも対処するシステムを模索する第11使徒イロウル。冬月コウゾウはこれを生物の生きるためのシステムそのものだと言っていました。

葛城ミサトは自分の弱点を克服して進化を続ける第11使徒イロウルに対し、マギシステムの物理的消去を提案します。マギと心中させるしか第11使徒イロウルを倒す手段は無いと考えたようです。

赤木リツコ :「無理よ。マギを切り捨てる事は本部の破棄と同義なのよ」

赤木リツコはマギの消去に反対します。これに対して葛城ミサトは提案を作戦部からの正式要請としますが、赤木リツコはそれをその場で拒否。技術部が解決すべき問題だと言っていました。

マギの消去を拒んだ赤木リツコでしたが、第11使徒イロウルが進化し続ける事に勝算を見出していました。

碇ゲンドウ :「進化の促進かね」、「進化の執着地点は自滅。死そのものだ」

冬月コウゾウ :「ならば、進化をこちらで促進させてやればいい訳か」

第11使徒イロウルが進化を続ける事を逆手に取り、進化を促進させる事で死へと向かわせる考えのようです。また、赤木リツコによると第11使徒イロウルが死の効率的な回避を考えた場合はマギとの共生を選択する可能性もあるとの事でした。

第11使徒イロウルの進化を促進させて自滅へと導くために赤木リツコが提案した方法は自滅促進プログラムを送り込む方法でした。カスパーを第11使徒イロウルへと直結させて逆ハックを仕掛けて自滅促進プログラムを送り込む考えのようです。但し、この方法では使徒に対して防壁を解放する事になり、カスパーは無防備な状態で使徒の攻撃に晒されなければならなくなるようでした。

碇ゲンドウ :「カスパーが速いか、使徒が速いか、勝負だな」

カスパーが乗っ取られるまでの間に第11使徒イロウルを倒さなければならない...速度が鍵となる勝負のようです。

発令所 : カスパー内部

赤木リツコはカスパーの本体内部に入り、作戦のための準備作業をしていました。

この準備作業中、赤木リツコは一緒にカスパーの本体内部に入っていた葛城ミサトにマギに就いて色々と話をしていました。

赤木リツコによるとマギは人格移植OSであり、その第1号のようです。そして、それは赤木リツコの母親である赤木ナオコが開発した技術であり、マギにはその赤木ナオコの人格が移植されているようです。

赤木リツコ :「言ってみればこれは、母さんの脳ミソそのものなのよ」

カスパーの蓋を切断して開くと中からは脳のようなものが見えていました。(だからと言って、カスパーの中に見えた脳のようなものが赤木リツコの物質的な脳ミソだと言う訳ではなさそうです。赤木リツコの言った「脳ミソ」と言う言葉は人格を移植してある事に対しての言葉だと思われます。)

赤木リツコは葛城ミサトがマギシステムの消去を提案した際に強く反対していましたが、それがマギに赤木ナオコの人格が移植されている事と関係があるかと言うと、そうでは無いようです。赤木リツコがマギシステムの消去に反対したのは単純に科学者としての判断との事でした。赤木リツコが言うには自身は母親の事をそれほど好きでは無かったようです。

使徒 対 カスパー

第11使徒イロウルによる侵入が進み、バルタザールが乗っ取られます。バルタザールが乗っ取られると直ぐに自律自爆が提訴され、今度は賛成2、反対1で可決されていました。自爆装置の起動はメルキオール、バルタザール、カスパーの3者の一致を得た後、02秒で行われるようでした。

リツコはカスパー本体の内部でカスパーに直結した端末を使ってカタカタと打ち込みを行っていました。この時、既にバルタザールはカスパーに侵入。カスパーへのハッキングは素早く進行し、自爆装置の作動(カスパーの乗っ取り)までには20秒しか残されていませんでした。

赤木リツコ :「大丈夫、1秒近く余裕があるわ」

状況的には押されていて、自爆装置の作動(カスパーの乗っ取り)が直ぐそこまで迫っていましたが、時間的には赤木リツコの方に余裕があるようでした。

赤木リツコ :「ゼロはマイナスじゃないのよ」

葛城ミサトの「一秒って」の台詞に返した赤木リツコの言葉です。

第壱話「使徒、襲来」の中では赤木リツコがエヴァンゲリオン初号機の起動確率「0.000000001パーセント」を「ゼロではなくってよ」と言っていました。また、第拾弐話「奇跡の価値は」の中では葛城ミサトが0.00001パーセントしか勝算の無い作戦を「ゼロでは無いわ」と言っていました。これまでは確率に関してはいくら低くなっても「ゼロで無い」と言う前向きな捉え方が見られましたが、時間の場合はゼロになっても「マイナスでは無い」と言う捉え方が出来るようです。これが確率であればゼロはゼロでしか無いのですが。

自爆装置の起動が残り数秒まで迫ったところで赤木リツコの作業が終わり、残り時間が2秒から1秒の間となったところで実行します。実行後の秒読みは0まで進んでいましたが、自滅促進プログラムの送り込みは間に合ったようであり、カスパー、バルタザール、メルキオールは速やかに元の状態へと戻って行っていました。これにより自律自爆の提訴は否決。自爆は解除されていました。

シグマユニットに蔓延っていた第11使徒イロウルは消滅していました。自滅促進プログラムが有効に働き、全滅したようです。

碇シンジ/惣流・アスカ・ラングレー/綾波レイ

碇シンジ、惣流・アスカ・ラングレー、綾波レイのプラグは地上へと射出された状態のまま回収されずにいました。プラグ内のパイロットは裸のため外にも出られないようでした。

使徒殲滅後 : 発令所

赤木ナオコは死ぬ前の晩に赤木リツコにマギは3人の自分だと言っていたそうです。「科学者としての自分」、「母としての自分」、「女としての自分」、その3人が鬩ぎ合っているのがマギであり、人の持つジレンマを意図的に残してあるとの事でした。

赤木ナオコの三つの面に就いて赤木リツコは...母としては分からない、科学者としては尊敬もしている、女としては憎んでさえる...と言っていました。母親としての赤木ナオコを分からないと言うのは「私は母親にはなれそうも無いから...」と言う事のようです。科学者として尊敬していると言うのは、赤城ナオコがマギの開発者であり、先人としての功績を残していると言う事から想像が付きます。ただ、女としての赤木ナオコを憎んでいると言うは(この段階では)その理由を推察する材料が無く、言葉以上の事は分かりません。

赤木リツコ :「カスパーには女としてのパターンがインプットされていたの。最後まで女でいる事を守ったのね。ほんと、母さんらしいわ」

これに就いては単に順番的にカスパーが最後になっただけのような気もしますが...。それとも、メルキオール、バルタザール、カスパーの順でしかハッキング出来ないように、即ち、カスパーが必ず最後になるようにされているのでしょうか。

第拾参話「使徒、侵入」の終わりに

第拾参話「使徒、侵入」では姫には良く分からない部分がいくつもありました。それは姫が苦手なコンピューター関連のお話が含まれていたためだと思います。

姫は大抵の機械は苦手であり、中でもパソコンは特に苦手だと言えます。姫はあやちゃんに基本から学ぶように言われて(半ば強制されて)、一応、古いパソコンにも触ってDOSから勉強はしたのですが、それも姫の脳の性能では知識を殆ど吸収出来ずに終わり、未だにパソコンと言うものが良く分からないままでいます。勉強で身に付いたものと言えば変な癖()だけでした...。操作に関してもパソコンの起動と終了、後はダブルクリックがやっと出来る程度であり、普通にすら使えていません。その姫からするとマギがハッキングを受けている場面は理解不能な事ばかりでした。コンピューターは本当に難しく感じます...関連話を聞くのも実際に触るのも...。

(フォルダを咄嗟にディレクトリと言ってしまうのも、フロッピードライブが無い事に寂しさを感じてしまうのも、姫のパソコンの光学ドライブが「Q:」になっているのもこの時の勉強で付いた習慣です...。(但し、光学ドライブは(一つ目は)「Q:」で無ければ落ち着きませんが、起動ドライブは「C:」でも違和感はありません。勉強での最初の段階では「A:」、途中からは基本は「C:」で「A:」も可能と言う段階もあったのですが、時代の流れと同じで最後は「C:」を当然に感じるようになりました。))

「エヴァンゲリオン」を全体的に難しいと感じるのはこう言ったコンピューター関連の話だったり、SF的な話だったりと姫の苦手なもの、分からないもの、知らないものが随所に含まれているところにあると思います。第拾参話「使徒、侵入」はその典型の一つだと感じました。

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