新世紀エヴァンゲリオン 第弐話「見知らぬ、天井」 【解説】

第弐話「見知らぬ、天井」

碇シンジが葛城ミサトのところでお世話になるまでの流れと、第3使徒サキエル戦の回想です。

エヴァンゲリオン初号機と第3使徒サキエル

地上に出たエヴァンゲリオン初号機は第3使徒サキエル(この第弐話「見知らぬ、天井」ではまだ名前は不明)と対峙します。

エヴァンゲリオン初号機が地上に出た後、赤木リツコからの「今は歩く事だけ考えて」の指示に従い碇シンジがそれを考えるとエヴァンゲリオン初号機はゆっくりと前方に歩いていました。碇シンジの両手には操縦桿がありましたが、思考だけでも機体を動かす事が出来るようでした。思考によってどの程度の動作までが可能なのかは不明です。

赤木リツコはエヴァンゲリオン初号機が歩いただけで喜びと驚きが混在したような表情を見せていました。0.000000001の起動確立だったものが起動した時点でそれ以上に驚くような事があるのかと思ったのですが、この時点では歩いたと言うだけでも驚くべき事のようです。

歩き出したエヴァンゲリオン初号機は少し歩いたところでバランスを崩して転倒。そこに第3使徒サキエルが近づき、エヴァンゲリオン初号機は為す術無く一方的に攻撃を受けていました。

第3使徒サキエルの攻撃によりエヴァンゲリオン初号機は左腕損傷、頭部破損と窮地に追い込まれます。この頭部破損時の攻撃により碇シンジは発令所から反応が確認出来ない状態に陥り、そして、次に気が付いた時には病院のベッドの上でした。

碇シンジ :「知らない天井だ」

病院のベッドで目を覚ました碇シンジは天井を眺めて「知らない天井だ」と呟いていました。碇シンジにこう言う事を思い付く感性があると言う事もそうですが、それ以上にそれを独り言で口にしてしまう事に驚きました。姫なら思ったとしても口には出さないと思います。言った後に恥ずかしくなる事は必至ですので。

ゼーレ

エヴァンゲリオン初号機と第3使徒サキエルの戦いの後、ゼーレの5人のメンバーが集まり、碇ゲンドウを加えて話を行っていました。この時点では名前も目的も分からない集まりでした。

ゼーレはネルフに対する予算の権限を持っているらしく、スポンサーのような口ぶりが見られました。

ゼーレと碇ゲンドウの会話の中で「人類補完計画」と言う言葉が出て来ていました。使徒への対応だけで無く、この「人類補完計画」が碇ゲンドウの急務でもあるようです。

ゼーレの1人は「人類補完計画」を「絶望的状況下における唯一の希望」と言っていました。ですが、「人類補完計画」に就いてのそれ以外の事はこの段階では全く分からない状態でした。

また、この時、最後に「我々のね」と言葉を付け加えていましたが、その「我々」もどこまでを指してのものなのかは分かりません。人類なのか、ゼーレだけなのか。

シナリオB22

今回の使徒襲来に関しては一般向けにはシナリオB22で発表されていました。シナリオB22の詳しい内容は分かりませんが、使徒襲来に備えての情報操作の準備も周到に行われていたようです。

病院

病院には意識の回復した碇シンジを迎えに葛城ミサトがやって来ていました。

病院に来る前に行われた葛城ミサトと赤木リツコの会話からすると、碇シンジに外傷は無く、少し記憶に混乱があるものの精神汚染の心配は無いようでした。

「精神汚染」が何を意味するのかは分かりませんが、精神汚染が無いと聞いた葛城ミサトが安心していた事からすると、そう言う類のもののようです。

碇シンジは葛城ミサトに連れられて病院を去る際、病院に来ていた碇ゲンドウと鉢合わせしていました。碇シンジを見下ろすように見る碇ゲンドウに対して碇シンジは目を逸らしていました。

退院後、碇シンジは父親である碇ゲンドウとは別に一人で暮らす事になっていましたが、それを葛城ミサトが引き取っていました。

寄り道

葛城ミサトは自宅に帰る前に碇シンジを連れて街を見下ろせる場所に立ち寄っていました。そして、葛城ミサトと碇シンジが夕焼けの街を見下ろしている中、サイレンが鳴り、地下へと退避させてあった建物が地面から生えるように上がって来、街は元の姿へと戻っていました。

葛城ミサト :「これが使徒迎撃専用要塞都市、第3新東京市。私達の街よ。そして、あなたが守った街」

葛城ミサトはこれを碇シンジに見せたかったようです。

葛城ミサトのマンション

碇シンジ :「あの...お邪魔します」

葛城ミサト :「シンジ君、ここはあなたの家(うち)なのよ」

碇シンジ :「た、ただいま」

葛城ミサト :「お帰りなさい」

葛城ミサトのマンションに到着し、部屋に入る時の遣り取りです。

た、ただいま」と言った時に碇シンジが見せた表情はどこか臆病そうで、それでいて嬉しさと恥ずかしさが混じっているように見えました。

葛城ミサトの家の内部は散らかっていました。特にビールの空き缶がそこかしこにあり、普段の葛城ミサトの生活を知らずともそれが見えて来る場面でした。

葛城ミサトと碇シンジは夕食を取りますが、その夕食は買って来て暖めるだけのものでした。葛城ミサトはそれに加えてビールを飲んでいました。冷蔵庫の中も氷と抓みとビールばかりで、本当にビールが好きなようです。

葛城ミサト :「楽しいでしょ、こうして他の人と食事すんの」

玄関の遣り取りも、この食事も、この後の「二人の生活当番表」もそうですが、葛城ミサトは碇シンジに家(ホーム)を与えようとしているように見えます。それは碇シンジの意思とは関係無く「自分が与える」と言った感じに見えます。

食事の後、葛城ミサトと碇シンジはこれからの生活当番(朝食、夕食、ゴミ、風呂そうじ)を決めるジャンケンを行っていました。

ジャンケン中、碇シンジは4回グーが連続した後に5回目にはチョキを出し、5回連続でグーを出して来た葛城ミサトに負けていました。これも碇シンジの性格を表している場面のようです。

ジャンケンの結果によって作られた「二人の生活当番表」を見るとほとんどが碇シンジの当番になっていました。

「二人の生活当番表」には土日にもゴミ当番がありました。第3新東京市では土日もゴミを回収しているのか、ゴミを出す作業以外にも土日にはゴミに関して他にやるべき作業があるのか、それともそもそも「ゴミを出す当番」と言う意味では無いのか...。

二人の生活当番表

二人の生活当番表。ほとんどが碇シンジの当番になっている。

[ 画像引用元 : 新世紀エヴァンゲリオン © GAINAX ]

ペンペン登場

食事を終えた碇シンジがお風呂に入ろうとすると、お風呂には先客がいました。ペンペンと言う名前のペンギンです。葛城ミサトはペンペンを「新種の温泉ペンギン」と言っていました。

ペンペンは見た目はペンギンですが知能は高いように見えました。人の手を借りずに大抵の事はやって退けそうです。

葛城ミサト :「ちと、ワザとらしくはしゃぎ過ぎたかしら。見透かされてるのはこっちかもね」

お風呂場でペンペンと遭遇して慌ててお風呂場から居間へと飛び出して来た碇シンジが再びお風呂場へと戻って行った後の葛城ミサトの台詞です。葛城ミサトは碇シンジの前で意図的に楽しく賑やかに振舞っていたようです。

凍結中のゼロ号機

碇ゲンドウは赤木リツコと凍結中のゼロ号機を眺めながら話をしていました。

赤木リツコとの会話からすると病院で碇シンジと鉢合わせになった時の碇ゲンドウは病院に綾波レイの様子を見に来ていたようです。碇ゲンドウは綾波レイに就いて20日もすれば動けると言っていました。

碇ゲンドウ :「エヴァを動かせる人間は他にいない。生きてる限り、そうしてもらう」

赤木リツコ :「子供達の意思に関係なく、ですか」

第壱話「使徒、襲来」での碇ゲンドウの台詞「他の人間には無理だからな」もそうですが、ここでの「エヴァを動かせる人間は他にいない」と言う台詞では「なぜエヴァンゲリオンが限られた人間にしか動かせないのか」と言う疑問を感じました。まだ、エヴァンゲリオンがどのような仕組みで動いているのかが見えて来ない段階ですので。

碇シンジの部屋 1

碇シンジは自分の部屋のベッドの上で横になり、携帯音楽プレイヤーを使って音楽を聞いていました。眠ってはいないようでした。

碇シンジ :「ここも知らない天井」

部屋の天井を見て碇シンジが呟いた台詞です。

ここでも天井を眺めて思うところを口にした碇シンジ。第3新東京市に来るまでにいた場所でも碇シンジは同じように天井を眺める事が度々あったのかも知れません。

碇シンジが天井を眺めていると、今まで思い出さなかった記憶、エヴァンゲリオン初号機に乗っていた時の記憶が碇シンジの中で蘇って来ていました。

記憶 : 第3使徒サキエル戦

第3使徒サキエルの攻撃を受けてエヴァンゲリオン初号機内の碇シンジの反応が消えた後、エヴァンゲリオン初号機は、一時、完全に沈黙します。ですが、その後、エヴァンゲリオン初号機は再起動。第3使徒サキエルに襲い掛かり圧倒的な力を見せ、最後には第3使徒サキエルを自爆へと追い込んでいました。

再起動後のエヴァンゲリオン初号機の行動を赤木リツコは「暴走」と言っていました。

エヴァンゲリオン初号機は第3使徒サキエルを自爆に追い込む前に、損傷した左腕の自己修復を行ったり、第3使徒サキエルの両腕を粉砕して引き千切ったり、自らもATフィールドを展開する事で第3使徒サキエルのATフィールドを侵食して破ったりと、高い戦闘能力を見せていました。「暴走」する前は歩行すら困難な動き方だったのですが。

第3使徒サキエルは自爆時にエヴァンゲリオン初号機を道連れに大爆発を起こしていましたが、爆発後、エヴァンゲリオン初号機は頭部が落ちただけで済んでいました。

戦闘終了後、エヴァンゲリオン初号機内にいた碇シンジは呆然としていました。

碇シンジの部屋 2

第3使徒サキエルとの戦闘における一連の記憶を思い出した碇シンジ。そこに葛城ミサトがやって来て碇シンジに、一言、声を掛けていました。

葛城ミサト :「一つ、言い忘れてたけど、あなたは人に褒められる立派な事をしたのよ。胸を張っていいわ。おやすみ、シンジ君。がんばってね」

碇シンジが行ったのはエヴァンゲリオン初号機に乗って歩いたところまでであり、それ以降は「暴走」によって第3使徒サキエルを倒す事が出来たのですが、エヴァンゲリオン初号機に乗って起動に結び付けただけでも十分だったと言えるのかも知れません。葛城ミサトの言葉は、結果では無く、エヴァンゲリオン初号機に乗る事を決断した事、戦おうとエヴァンゲリオン初号機に乗り込んだ事を褒めているようにも聞こえました。

第弐話「見知らぬ、天井」の終わりに

限られた人間しか動かす事が出来なかったり、パイロットの操縦に関係無く動いて(暴走して)敵を倒したり、損傷した機体を自己修復したり...「エヴァンゲリオン」と言う作品を見るまでに「ガンダムシリーズ」と「トップをねらえ!」しかロボット物アニメを見ていない姫にとって、この第弐話「見知らぬ、天井」でのエヴァンゲリオン初号機の姿は「エヴァンゲリオン」と言う作品を「今までに見たロボット物アニメとは違う」と思わせる最初の要因となりました。

TOPへ