新世紀エヴァンゲリオン 第六話「決戦、第3新東京市」 【解説】

第六話「決戦、第3新東京市」

第5使徒ラミエル戦。ヤシマ作戦のお話です。

エヴァンゲリオン初号機 : 回収

第5使徒ラミエルの光線の直撃を受けたエヴァンゲリオン初号機は直ぐにケイジへと下げられ、回収されていました。

碇シンジは生きてはいましたが、エントリープラグ内で気を失っていました。そして、エントリープラグ内から回収した後、直ぐに緊急処置室へと運ばれていました。

第5使徒ラミエル

第5使徒ラミエルに1/1バルーン・ダミーを近づけると第5使徒ラミエルは加粒子砲でそれを攻撃。ダミーは蒸発していました。次に独12式自走臼砲で攻撃を行いますが、第5使徒ラミエルはその攻撃をATフィールドで防ぎ、直ぐに反撃し、独12式自走臼砲を消滅させていました。

葛城ミサト :「攻守共にほぼパーペキ。まさに空中要塞ね」

第5使徒ラミエルは一定以内の外敵を自動排除するようになっているらしく、エリアに侵入すればそれと同時に加粒子砲による100パーセントの狙い撃ちが待っているようです。第5使徒ラミエルの放つ加粒子砲はエヴァンゲリオン初号機の装甲を簡単に溶かすほどの威力があり、このためエヴァンゲリオンによる近接戦闘は無理なようでした。また、エリア外から攻撃するにしても、第5使徒ラミエルには強力なATフィールドがあり、これを破って第5使徒ラミエルを倒すのは容易ではなさそうでした。葛城ミサトはこの第5使徒ラミエルを「攻守共にほぼパーペキ。まさに空中要塞ね」と表現していました。

ネルフが手を拱いている中、第5使徒ラミエルは第3新東京市ゼロエリアへと進行。ネルフ本部の直上であるこの地点から下方へと向かい巨大な掘削シールド(円筒形に掘削機を付けたもの)でジオフロント外層の掘削を開始していました。ジオフロントの外層を掘ってネルフ本部へと直接的に攻撃を仕掛けようとしているようでした。

ジオフロント

ジオフロントの外層には22層の装甲板が備えられていました。しかし、これは第5使徒ラミエルの進行を完全に食い止める事が出来るようなものでは無く、時間稼ぎにしかならないようでした。

ジオフロントへと第5使徒ラミエルの掘削シールドが到達する予想時刻は明朝の午前0時06分54秒との事でした。残り時間は10時間足らず()しか無く、それまでの間に第5使徒ラミエルを倒さなければならないようです。

(これは、葛城ミサトが最初にそれを確認した際には約9時間50分だったのですが、その後に流れたアナウンスでは、計算しなおしたのか、残り時間が増え9時間55分となっていました。)

葛城ミサトの作戦

葛城ミサト :「目標のATフィールドを中和せず、高エネルギー集束帯による一点突破しか方法はありません」

葛城ミサトは碇ゲンドウに目標のレンジ外、長々距離からの直接射撃を提案します。

この作戦にマギは賛成2、条件付賛成1。その勝算は8.7パーセント。これが最も高い数値を示した作戦のようでした。(この時点ではマギはスーパーコンピューター・マギとしか説明されていません。)

碇ゲンドウ :「反対する理由は無い。やりたまえ、葛城一尉」

葛城ミサトの作戦は碇ゲンドウの許可を得ていました。

作戦の準備

ネルフの持つEVA専用陽電子砲(ポジトロンライフル)(円環加速式試作20型)ではATフィールドを貫くほどの大出力には耐えられなと言う事で、葛城ミサトは戦略自衛隊つくば技術研究本部へと出向いて試作自走陽電子砲を特務機関ネルフで徴発していました。

葛城ミサト :「ご協力、感謝いたします」

葛城ミサトは戦自技研に対して強制的な取り立てを行っておきながら、思ってもいない感謝の言葉を最後に付け加えていました。協力するもしないも断りようが無い戦自技研からすると皮肉にしか聞こえない言葉です。

徴発した試作自走陽電子砲の運搬には綾波レイのエヴァンゲリオン零号機が当たっていました。エヴァンゲリオン零号機はまだ戦闘は無理なようでしたが、きちんと動きはするようです。

日向マコト :「しかし、ATフィールドをも貫くエネルギー産出量は最低1億8000万キロワット。それだけの大電力をどこから集めて来るんですか」

葛城ミサト :「決まってるじゃない、日本中よ」

葛城ミサトは1億8000万キロワットの電力を日本中から集めて来るつもりのようでした。

そのために午後11時30分より明日未明に掛けて全国で大規模停電が実施される事になっていました。

防御手段としては盾、EVA専用耐熱光波防御兵器(急造仕様)を用意していました。これはSSTOの底部であり、お下がり(退役した?SSTOの再利用)のようです。SSTOの底部は超電磁コーティングされていて、加粒子砲の攻撃に17秒は耐えられるそうです。

葛城ミサト :「作戦開始時刻は明朝0時。以後、本作戦をヤシマ作戦と呼称します」

作戦開始時刻は明朝0時、狙撃地点は双子山山頂に決定。ヤシマ作戦と言う作戦名が付けられていました。

中央病院 第3外科病棟

碇シンジは病院で意識を回復。検査数値に問題は見られないようでした。

病室に移された碇シンジの下に綾波レイがやって来てヤシマ作戦のスケジュールを伝えます。ヤシマ作戦のスケジュールを聞いた後、碇シンジは綾波レイの前でエヴァに乗りたく無いと泣き言を言い出していました。使徒と戦う事に恐怖を感じているようです。

綾波レイ :「じゃ、寝てたら」、「初号機にはあたしが乗る」

綾波レイは碇シンジに対して自分がエヴァンゲリオン初号機に乗ると言い残し、病室から去っていました。

初号機と零号機の出動

夕刻。碇シンジ達が通う中学校(第3新東京市立第壱中学校)の隣にある山からエヴァンゲリオン初号機とエヴァンゲリオン零号機が出現。2機のエヴァはそこから双子山へと向かって移動していました。

碇シンジは綾波レイが病室を出た後に何かを考えていたような感じでしたが、結局、エヴァに乗る事にしたようです。

双子山

碇シンジはエヴァンゲリオン初号機で砲手を担当、綾波レイはエヴァンゲリオン零号機で防御を担当する事になります。これは、精度の高い作業が求めらる中で碇シンジの方がシンクロ率が高いからのようでした。

戦略自衛隊から徴発した陽電子砲はネルフによってEVA専用改造陽電子砲(ポジトロンスナイパーライフル)(ネルフ仕様・もと戦自研自走陽電子砲)へと姿を変えていました。使用に際しては理論上は問題無いようでしたが、試射は行っていないようであり、実際には撃ってみないと分からない部分もあるようでした。また、連続での射撃は出来ないようであり、冷却や再充填やヒューズの交換などで次の攻撃を行うまでにはある程度の時間を要するようでした。

搭乗前

碇シンジと綾波レイはプラグスーツ(この時点では名前不明)に着替えます。碇シンジは脱いだ服をきちんと畳んで椅子の上に置いていましたが、綾波レイは服を床に脱ぎっぱなしにしていました。

綾波レイ :「あなたは死なないわ。私が守るもの」

作戦前に死の可能性を口にする碇シンジに対して言った綾波レイの言葉です。「自分が死んでも」と言う意味を含んでいるようにも聞こえます。

作戦開始前

作戦開始前。日本中の電気が次々に止まって行きました。

碇シンジ :「綾波はなぜこれに乗るの?」

綾波レイ :「絆だから」

碇シンジ :「絆?」

綾波レイ :「そ、絆」

碇シンジ :「父さんとの?」

綾波レイ :「みんなとの」

碇シンジ :「強いんだな、綾波は」

綾波レイ :「私には他に何も無いもの」

綾波レイにとってはエヴァに乗る事が「みんなとの絆」のようです。

碇シンジは「エヴァに乗る事でみんなに必要とされている事」に対しては不服を感じている部分があるように思われますが、綾波レイはエヴァのパイロットとしてでも求められている事に他者との繫がり、延いてはそこに存在理由を感じているのかも知れません。

他者に自分自身を認めて受け入れて欲しいと望んでる(一方的に望んでいるだけの傾向が強い)碇シンジ。自分自身が無く、他者との繫がりによって自分が存在しているかのような綾波レイ。他者に受け入れられる事によって生きよう(生かされよう)としている事と他者との関係の中に存在しようとしている事には違いはありますが、どちらも積極的に自分自身を生きようとするものでは無いように思います。

綾波レイ :「時間よ、行きましょ」、「じゃ、さよなら」

作戦開始直前。綾波レイは別れを告げる言葉を口にして作戦へと就いていました。

この場面では綾波レイは満月を背景に立っていました。綾波レイと月とを結び付ける印象的な場面、その最初の場面()です。

(綾波レイはオープニング(月を背景にした綾波レイの姿が差し込まれている)やエンディング(月を背景にして綾波レイが水の中を落ちて行っている)でも月と(水中)と結び付けられていますが、本編ではこれが最初です。)

月を背景に立つ綾波レイ

月を背景に立つ綾波レイ。

[ 画像引用元 : 新世紀エヴァンゲリオン © GAINAX ]

月を背景に立つ綾波レイ(オープニング)

オープニング。月を背景に立つ綾波レイ。

[ 画像引用元 : 新世紀エヴァンゲリオン © GAINAX ]

月を背景に水の中を落ち行く綾波レイ(エンディング)

エンディング。月を背景水の中を落ち行く綾波レイ。

[ 画像引用元 : 新世紀エヴァンゲリオン © GAINAX ]

ヤシマ作戦開始

エヴァンゲリオン初号機に乗り込んだ碇シンジはポジトロンライフルの発射準備完了を待ちます。日本中のエネルギーがポジトロンライフルへと集まって来ていました。

発射準備が完了。エヴァンゲリオン初号機は第5使徒ラミエルに向けてポジトロンライフルの引き金を引きます。それと同時に第5使徒ラミエルもエヴァンゲリオン初号機に向けて加粒子砲を発射していました。第5使徒ラミエルはこちらの攻撃に気が付いていたようです。

それぞれから発射された光線はお互いに届く前に干渉し合って軌道が変化。一射目は互いに的を外していました。

エヴァンゲリオン初号機は急いで2射目の準備を進めますが、その最中、エヴァンゲリオン初号機よりも早く第5使徒ラミエルが2射目を発射します。それを綾波レイの乗るエヴァンゲリオン零号機が盾で防いでいましたが、加粒子砲を受ける盾は次第に溶けて行っていました。

盾が溶けて行く中、エヴァンゲリオン初号機のポジトロンライフルの2射目の発射準備が完了します。碇シンジは準備完了と共に急いで2射目を発射。それは第5使徒ラミエルのATフィールドを貫いて第5使徒ラミエルに直撃し、第5使徒ラミエルを沈めていました。

碇シンジと綾波レイ

加粒子砲を盾で防いでいたエヴァンゲリオン零号機は加粒子砲を受けていた時間が長かったため機体の表面が溶けた状態になっていました。

碇シンジはエヴァンゲリオン初号機を使ってエヴァンゲリオン零号機のエントリープラグを排出。そして、エントリープラグへと急いで駆け寄り、加熱したハッチを手で抉じ開け、綾波レイの無事を確認していました。その姿を見ると碇シンジは綾波レイの事をすごく心配しているようでした。

碇シンジ :「自分には、自分には他に何も無いって、そんなこと言うなよ」、「別れ際にさよならなんて、悲しい事言うなよ」

綾波レイの無事を確認した碇シンジはその場で泣き出していました。

ここでの碇シンジの台詞は思ったとしても恥ずかしくて言えない台詞のように思います。それを言えてしまう碇シンジは凄いと思いました。

綾波レイ :「何、泣いてるの?」、「ごめんなさい。こう言う時、どんな顔すればいいのか分からないの」

綾波レイは目の前で泣いている碇シンジの姿を見て困惑しているようでした。

碇シンジ :「笑えばいいと思うよ」

この台詞に碇ゲンドウの笑顔が、一瞬、頭を過ぎり、その後、綾波レイは碇シンジに向かって笑顔を見せていました。

第六話「決戦、第3新東京市」の終わりに

綾波レイは他者との繫がりの中に存在しようとしているだけで、自分が自分自身としてどうありたいか、他者との間で自分がどうありたいかと言うものが無いように感じられました。それは、自分自身として世界を生きているのでは無く、ただ世界の中で生きているだけと言うように見えます。そこには生きる事の苦しみが無い(碇シンジのように自分自身にしがみ付いて悶える事も無い)半面で自分自身としての幸せも無く(それ以前に幸せになりたいと思う事も無いのだろうと思いますが...)、この世に生を受けた者としては綾波レイのような人生、自分自身が自分の中に無い(零では無いが希薄にしか無い)人生はとても寂しいもののように思いました。綾波レイ自身はそうは感じないのかも知れませんが。

一方の碇シンジ(これまでに加え、これ以降の話での碇シンジも含め)は...他者によって生かされようとはするが自分が自分自身として世界の中で能動的に生きて行こうとはしない、他者には自分にとって都合の良いように理解される事を望むが自分では他者を理解しようとはしない、他者には自分が自分自身として受け入れられる事(必要とされる事)を望むが自分では他者を受け入れようとは(他者に心を開こうとは)しない、他者に対して自分が一方的に抱く勝手な期待に他者が応えてくれないと逆恨みを始める、自分と他者との間に生じる不安や苦しみに絶えられなくなると現実から逃げ出す、痛みに弱く、最後には自分の心を自分で(あたかも自分が被害者であるかのように)殺せる...そう言った少年のように見えますが、それはそれで(他者との関係の中に生きているだけで、それ以上を求めていない)綾波レイとは反対に生きるのが大変そうです...。

自分が自分自身として世界の中で生きて行く事を望んでいる(積極的にそうあろうとしている)姫にとっては、自分を持たない希薄な人生や現実から目を逸らして生きるような生き方は(碇シンジや綾波レイよりも人生経験の短い姫が言っても説得力が無いかも知れませんが)非常に受け入れ難い生き方であると言えます。綾波レイも碇シンジもそうしたくてしている訳では無いのは分かりますが...姫は自分であったならそうはなりたく無いと思いました。(姫が碇シンジや綾波レイと同じ年齢に達した時に何を思うか(同じ事を言えるか)は分かりませんが、少なくとも今はそう思います。)

「エヴァンゲリオン」は既に自分の中に一応の結論があって普段は気にしなくなっているような事を改めて考えさてくれる事が多く、それが作品の魅力の一つでもあるように思います。物語としてはまだ序盤ですが、第六話「決戦、第3新東京市」まででもそれは十分に感じられました。

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