新世紀エヴァンゲリオン 第拾壱話 「静止した闇の中で」 【解説】

第拾壱話 「静止した闇の中で」

第9使徒マトリエル戦。第3新東京市及びネルフ本部施設が電力を失っているところに使徒が襲来し、戦闘が行われます。

通勤時の電車内

通勤時の電車内。赤木リツコ、伊吹マヤ、青葉シゲル、冬月コウゾウが揃い、そこでの会話の中でマギの話が出ていました。

マギに就いてはこれまで詳しい事は殆ど語られていませんでしたが、電車内での会話の内容からすると、マギは3台のスーパーコンピューターによって形成されるシステムであり、3系統のコンピューターによる多数決によって結果を導き出しているようでした。民主主義の基本に則ったシステムだと言っていました。

第3新東京市の市政も、市議会はあるようですが、実質的にはマギが行っていると言えるようでした。議会はマギの決定に従うだけであり、冬月コウゾウはこれを「最も無駄の少ない効率的な政治だよ」と言っていました。

電車内では青葉シゲルと伊吹マヤは、副指令である冬月コウゾウがいるためか、空席だらけの状態にも関わらず、座席には座らずに吊革に掴まって立っていました。

碇シンジと碇ゲンドウ

碇シンジは公衆電話から碇ゲンドウに電話を掛けていました。

碇シンジは躊躇いを見せながらも碇ゲンドウに学校で進路相談の面接がある事を伝えます。しかし、碇ゲンドウからは「そう言う事は全て葛城くんに一任してある」と言われていました。そして、下らない事で電話をするな、無駄な電話を取り次ぐなと...。碇ゲンドウは息子である碇シンジとの係わりを避けているように見えます。

この電話の途中、回線が不自然な形で切れていました。

第3新東京市及びネルフ本部施設の大停電

ネルフ本部施設は、突如、施設の電源が殆どが止まる大規模な停電に見舞われます。葛城ミサトと加持リョウジが乗っていたエレベーターは停止し、赤木リツコがエヴァンゲリオン零号機の第2次稼動延長試験を行っていた実験場でも全ての電力が失われた状態になっていました。

この事態に冬月コウゾウは僅かに生き残っている電源を全てマギとセントラルドグマに回すように指示します。それでは全館の生命維持に支障が出るようですが、マギとセントラルドグマが最優先のようです。

ネルフ本部施設と同様に第3新東京市でも大規模な停電が起こっていました。碇シンジ、惣流・アスカ・ラングレー、綾波レイの3人はネルフ本部施設へと向かう途中でしたが、ネルフ本部施設に入るゲート前のIDカードを読み取る機械が停電のために動かず、ゲートを潜る事が出来ずにいました。

エレベーター内での葛城ミサトと加持リョウジの話からするとネルフ施設の電源は正、副、予備の3系統が用意されていて、それが同時に落ちると言う事は考えられないようです。誰かによって落とされたと考えるのが自然なようです。

第9使徒マトリエル襲来

府中総括総隊司令部では正体不明の反応を確認します。上陸予想地点は旧熱海方面でした。

この正体不明の反応に対して府中総括総隊司令部の人間は「恐らく8番目の奴だ」と言っていました。使徒は第9使徒マトリエル(この段階では名前は不明)であり、第9使徒だと言う事を考えると9番目、第3使徒サキエルから数えると7番目になるので、この「8番目」と言う言葉には疑問が残ります。第1使徒アダム(この段階ではアダムが使徒だと言う事は見ている人には明かされていません)、(不明の第2使徒()を飛ばし、)それと第3使徒サキエルからの7体の使徒を合わせての「8番目」なのでしょうか。ただ、アダムの存在を知っているのは極一部の人間だけだと思われ、府中総括総隊司令部の人間がアダムを知っているとは思えません。

(第2使徒はテレビシリーズと旧劇場版を通して明言はされていませんでしたが、ヱヴァンゲリヲン新劇場版「序」の中でリリスだと言う事が明かされています。)

その後、第9使徒マトリエルは上陸を果たしますがネルフに動きはありませんでした。

ネルフ本部施設では赤木リツコと伊吹マヤが電気式の扉を人力で開けさせ、その後、タラップを上って発令所の持ち場へと入っていました。一方、葛城ミサトと加持リョウジはエレベーター内に閉じ込められたままでした。

碇シンジ、惣流・アスカ・ラングレー、綾波レイの3人はネルフ本部施設に入る手段も連絡を取る手段も無く困っていましたが、緊急時のマニュアルが用意されていたらしく、それを頼りにネルフ本部施設への道を探す事になります。それに当たり、惣流・アスカ・ラングレーが団体行動でのリーダーを自ら買って出ていました。

第9使徒マトリエルが、依然、第3新東京市へと向かって進行を続ける中、府中総括総隊司令部はネルフ本部への連絡が取れずにいました。そこで使徒の襲来を知らせるために第3新東京市へと航空機を飛ばしていました。

第3新東京市へと入った航空機が使徒襲来の知らせを行う中、地上にいてそれを聞いた日向マコトはその事をネルフ本部に知らせようとします。

日向マコト :
「ラッキー」

使徒の襲来をネルフ本部に知らせようにも知らせる手段が無く、どうしようかと考えていたところに、丁度、高橋覗選挙事務所の街宣車がやって来た事に対する日向マコトの台詞です。姫は「ふしぎの海のナディア」を見てから「エヴァンゲリオン」を見ている事もあり、ここでは「蟹サラダ」他を思い出しました。

日向マコトはこの通り掛かった高橋覗選挙事務所の街宣車に乗せて貰い、使徒襲来を知らせるためにネルフ施設へと向かっていました。

冬月コウゾウ :
「ぬるいな」

碇ゲンドウ :
「あぁ」

発令所の明かりはロウソクで賄われていました。また、電源が落ちたネルフ施設内では空調も止まった状態であり、赤木リツコ、伊吹マヤはウチワを使って扇ぎ、碇ゲンドウ(と、恐らく、冬月コウゾウ)はバケツに水を張って足を浸けていました。

外部から隔離されても自給自足出来るコロニーとして作られてるジオフロント。その全ての電源が落ちると言う状況は理論上は有り得ないようであり、誰かが故意に行った事は明らかなようでした。そして、その目的はネルフ本部の調査であると思われ、復旧ルートからネルフ本部の構造を推測しようとしていると考えられるようです。

そこで赤木リツコは全体の把握を困難にさせるためマギにダミープログラムを走らせる事を碇ゲンドウに提案していました。(それぐらいの事はマギが推測と判断を行い承認を求めて来ても良いように思うのですが、恐らく、現在は維持するだけで精一杯の状態なのかも知れません。)

碇シンジ、惣流・アスカ・ラングレー、綾波レイの3人は緊急時のマニュアルを頼りにネルフ本部施設を目指していましたが、中々辿り着けずに迷っていました。

そこに街宣車でネルフ本部へと向かいながら使徒の接近を拡声器で伝えている日向マコトの声を聞きます。使徒の接近を知った碇シンジ、惣流・アスカ・ラングレー、綾波レイの3人は近道を使ってネルフ本部へと急いでいました。

碇シンジ :
「ねぇ。使徒って何なのかな」

碇シンジ :
「使徒。神の使い。天使の名を持つ、僕らの敵。何で戦うんだろう」

使徒が「ANGEL(天使)」である事はこれまでにもモニターの表記から見て取れましたが、「天使の名を持つ」と言う点に関しては(使徒は確かにそれぞれに具体的な天使名が与えられてはいるものの、それは)後の物語内で明らかになる事であり、見ている人には現段階では理解の及ばない情報だと言えると思います。(「天使の名を持つ」と言う表現を「天使と呼ばれる(呼ばれている)」と置き換える事も出来ますが、ここでは後に物語内で明らかになる「具体的な天使名」を指しているものとしました。)

惣流・アスカ・ラングレー :
「あんたバカァ。訳分かんない連中が攻めて来てんのよ、降り掛かる火の粉は払い除けるのが当ったり前じゃない」

戦う以外の解決策の有り無しに関係無く、攻めて来る相手は敵として討つ()...と言う考えはあって当然の考えではあると思います。それは訳が分からないままであってもそうですし、相手の事を理解したとしてでもそうです。例え相手に戦う正当な理由があって、それを理解し認めたとしてでさえ、黙って死んで行く訳には行きませんので。

(第8使徒サンダルフォンの時のように攻めて来た訳では無い相手に対して自分達から仕掛けて行くと言う事もありましたが、使徒に対しては、攻めて来ようがそうで無かろうが「今後、攻めて来るであろう敵」と見做しての先制攻撃も構わない相手、和解や共存など有り得ない、そのための試みすら無意味な「絶対に分かり合えない相手」(本当にそうであるかどうかは別にして)、倒す以外には無い、そうで無ければ人類が滅ぼされてしまう「絶対的な人類の敵」(同じく)と言う人類的な結論が既にあるのかも知れません。使徒を全て倒さなければ人類補完計画の実行に移る事が出来ないと言う事もありますし、そのために(分かり合える道、共存の道が残されていても)人類にとっての絶対的な敵、倒す以外に無い敵として扱わなければならないと言うところもあるのかも知れませんが...。もしくは、本当に「分かり合う事の出来ない相手」、「生き残るためには殺し合うしか無い相手」であると言う事も考えれますが...。)

惣流・アスカ・ラングレー :
「使徒を肉眼で確認。これで急がなきゃいけないのが分かったでしょう」

碇シンジ、惣流・アスカ・ラングレー、綾波レイの3人が進んだ先には左右の分岐路がありました。ここではどちらに進むかで惣流・アスカ・ラングレーと綾波レイの意見が分かれ、結局、リーダーである惣流・アスカ・ラングレーの選んだ右の道を進んだのですが、道を進んで行って突き当たりにある扉を開けると...そこは地上で、しかも、目の前には第9使徒マトリエルの姿が...。惣流・アスカ・ラングレーは「使徒を肉眼で確認」と苦し紛れの言葉を口にしていましたが、分岐路での選択を誤ったようでした。

エヴァンゲリオン発進準備

ネルフ本部発令所に日向マコトが到着。使徒が接近中である事を伝えます。

使徒接近の情報を受け、ケイジではエヴァの発進準備が行われます。これには碇ゲンドウも出ていました。

綾波レイはネルフ本部へと通じる道を知っているかのようであり、碇シンジと惣流・アスカ・ラングレーはその後に付いて進んでいました。

惣流・アスカ・ラングレー :
「あんた、碇指令のお気に入りなんですってね」、「やっぱ可愛がられてる優等生は違うわね」

惣流・アスカ・ラングレー :
「いつも澄まし顔でいられるしさぁ」

惣流・アスカ・ラングレー :
「あんた、ちょっと贔屓にされてるからって嘗めないでよ」

惣流・アスカ・ラングレーは、自分を差し置いて勝手に団体を先導したり、自分の言葉に返事を返して来なかったりする綾波レイに対し、不満をぶつけていました。第拾話「マグマダイバー」でも綾波レイを敵視しているような場面(エヴァンゲリオン弐号機に綾波レイが乗る事を強く拒否した場面)がありましたし、何かに付けて綾波レイの事が気に入らないようです。第九話「瞬間、心、重ねて」での初対面時はそのような事は無かったのですが...。

綾波レイ :
「嘗めてなんかいないわ」、「それに贔屓もされてない。自分で分かるもの」

綾波レイは碇ゲンドウの目的のために必要なだけであって、綾波レイと言う人間として碇ゲンドウに必要とされている訳では無く、その事は綾波レイも分かっているのかも知れません。(少なくとも劇場版「Air/まごころを、君に」では碇ゲンドウの目的のために利用される事を拒み、自分の意思で碇ゲンドウから離反しています。)

綾波レイに従って進んだ先は行き止まりになっていました。

綾波レイ :
「仕方ないわ、ダクトを破壊して、そこから進みましょう」

惣流・アスカ・ラングレー :
「ファーストって怖い子ね。目的のためには手段を選ばないタイプ。いわゆる独善者ね」

惣流・アスカ・ラングレーの言葉の直ぐ後にエヴァンゲリオンの発進準備を手動で行っている碇ゲンドウの姿が映っていました。ここで惣流・アスカ・ラングレーが独善者と表現したのは綾波レイの事だけですが、演出的にはこの言葉は碇ゲンドウにも繫がっているように見えます。

エヴァンゲリオン発進

碇シンジ、惣流・アスカ・ラングレー、綾波レイの3人は、その後、ダクト内を進み、ケイジへと出ていました。ケイジではエヴァンゲリオンの発進準備が完了間近でした。

碇シンジはエヴァンゲリオンの発進準備作業を行っている碇ゲンドウの姿を見詰めていました。自分の知らない父親の一面だったのだと思います。

発進準備完了後、エヴァンゲリオン初号機、エヴァンゲリオン弐号機、エヴァンゲリオン零号機が発進。発進プロセスは手動で行われ、エヴァンゲリオンの拘束具の除去も実力によるものでした。

3体のエヴァンゲリオンの背中には非常用バッテリーが取り付けられていました。

第9使徒マトリエル戦

発進した3体のエヴァンゲリオンは横穴を這って進み、縦穴へと出た後、その縦穴を上へと登ります。しかし、直上には第9使徒マトリエルが待ち構えていて、縦穴へと溶解液を流し込んで来ていました。第9使徒マトリエルが流し込む溶解液を浴びた3体のエヴァンゲリオンは縦穴を落下。途中で何とか踏み留まって横穴へと避難したものの、碇シンジ達は...ライフルを落下時に縦穴の底に落とし、非常用の電池は既に切れ、内部電源の残りは3分以下...と言う厳しい状況に立たされていまた。

この厳しい状況の中、第9使徒マトリエルを倒す作戦を惣流・アスカ・ラングレーが提案します。

それは...3体のエヴァンゲリオンをディフェンス、オフェンス、バックアップに分け、縦穴に出た後、ディフェンスがATフィールドを中和しつつ機体を盾にオフェンスを溶解液から守り、その間にバックアップが縦穴の底へと落ちたライフルを回収してオフェンスへと渡し、ライフルを受け取ったオフェンスが一斉掃射にて目標を破壊...と言う作戦でした。

ディフェンスは惣流・アスカ・ラングレーが担当。オフェンスは碇シンジ、バックアップは綾波レイが担当する事になります。この中でディフェンスが最も危険な役割となるようでしたが、惣流・アスカ・ラングレーはその危険な役割を自ら買って出ていました。第拾話「マグマダイバー」で受けた借りを碇シンジに返すためのようです。

作戦が開始され、縦穴へと出たエヴァンゲリオン弐号機が機体を盾に溶解液を防ぎ、その間にエヴァンゲリオン零号機は縦穴の底へと下りて行き、ライフルを回収。これをエヴァンゲリオン初号機へと渡し、ライフルを受け取ったエヴァンゲリオン初号機は盾となっていたエヴァンゲリオン弐号機が避けると同時に第9使徒マトリエルへと向かってライフルを掃射。第9使徒マトリエルを見事に沈黙させていました。

ネルフ本部施設 : 電源回復

第9使徒マトリエル殲滅後。葛城ミサトはエレベーターの中で「もれちゃう」と言いながら騒いでいましたが、その時、ネルフ本部施設の電源が回復。葛城ミサトの乗っていたエレベーターはフロアに到着し、扉が開いていました。

伊吹マヤ :
「不潔」

扉が開いたエレベーターの中には電源が回復してエレベーターが動き出した拍子に倒れて縺れた葛城ミサトと加持リョウジの姿がありました。それを見た伊吹マヤは無表情で「不潔」と呟いていました。第七話「瞬間、心、重ねて」で葛城ミサトの家から出て来た碇シンジと惣流・アスカ・ラングレーの姿を見た時に洞木ヒカルが言った「不潔」と言う言葉もそれが指すところが何なのか分かりませんでしたが、ここでの伊吹マヤの「不潔」も何を指して用いられているのかが良く分かりませんでした。葛城ミサトと加持リョウジの重なり倒れている姿が汚らわしい事をしている状況に見えたのでしょうか。

その夜

大停電があった夜。碇シンジ、惣流・アスカ・ラングレー、綾波レイの3人は第3新東京市を見下ろせる高台にいました。ネルフ本部施設の電源は第9使徒マトリエルを倒した後、直ぐに回復していましたが、第3新東京市は夜になっても停電が続いているようであり、暗いままでした。

その後、第3新東京市も停電から復旧し、街には電気の光が戻っていました。

第拾壱話「静止した闇の中で」の終わりに

この第拾壱話「静止した闇の中で」では「ふしぎの海のナディア」の第21回「さよなら...ノーチラス号」での「動力を失ったノーチラス号」の姿を思い出しました。対消滅エンジンが停止して動力を失ったノーチラス号ではクルー達が人力でミサイルの発射口を開け、手動でミサイル発射を行ったのですが、この動力を失って人の手に頼るしか無くなった万能潜水艦ノーチラス号と今回のネルフ本部施設が重なって見えました。動かなくなった「科学の粋」と最後に残された人力と言う点では共通しているように思います。

もう一つ、「ふしぎの海のナディア」を見ていた事からになりますが、第9使徒マトリエルに付いていた目を見た際にはネオ・アトランティスのマークやネモ船長の帽子やノーチラス号の缶詰などに付いていたマークを思い出しました。三角形の中の目と言えば「ウジャトの目」ではあるのですが、それよりも「ナディア」の中に見られた(三角形に囲まれてもいない)「目」に近いものを感じました。

第9使徒マトリエルの目 横から

第9使徒マトリエルの目。横から。

[ 画像引用元 : 新世紀エヴァンゲリオン (c) GAINAX ]

第9使徒マトリエルの目 真下から

第9使徒マトリエルの目。真下から。

[ 画像引用元 : 新世紀エヴァンゲリオン (c) GAINAX ]

タルテソス跡の内部の扉

タルテソス跡の内部の扉。他にもネモ船長の帽子やノーチラス号の缶詰などにも似たようなマークが見られる。

[ 画像引用元 : 新世紀エヴァンゲリオン (c) GAINAX ]

ガーゴイルの仮面のマーク

ガーゴイルの仮面のマーク。ネオ・アトランティス内では様々なところに同じマークが見られる。

[ 画像引用元 : 新世紀エヴァンゲリオン (c) GAINAX ]

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